胡蝶蘭の花をよく見ると、中央にある特徴的な花びらが下を向いています。
この花びらは「リップ」と呼ばれ、胡蝶蘭らしい華やかな姿を作る大切な部分です。しかし、リップは最初から現在の位置にあるわけではありません。
多くの胡蝶蘭では、つぼみが成長して花が開くまでの間に、花の付け根がゆっくりとねじれます。その結果、リップが下側に移動するのです。
今回は、開花前の胡蝶蘭で起きている「花の回転」について、分かりやすくご紹介します。

胡蝶蘭の花は開く前に向きを変える
胡蝶蘭の花は、つぼみが成長する途中でおよそ半回転し、開花するときにはリップが下を向くようになります。
この動きは「リサピネーション」と呼ばれ、日本語では「再転位」や「花の反転」と表現されることがあります。
半回転と聞くと、花が一気にくるりと回る姿を想像するかもしれません。しかし、実際にはつぼみの成長に合わせて少しずつ向きが変わります。
毎日眺めていても気づきにくい、とてもゆっくりとした動きです。
ただし、胡蝶蘭の花びら自体が動いて、向きを変えているわけではありません。
ねじれるのは、花の付け根にある子房や花柄にあたる部分です。そこが成長しながらねじれることで、つぼみ全体の向きが変わります。
例えるなら、棒の先に付いた飾りを、棒の部分からゆっくりひねるような動きです。
花の付け根の左右で成長の仕方に差が生じることが、ねじれにつながると考えられています。また、ラン科植物の研究では、重力や植物ホルモンの働きも花の向きに関係することが報告されています。ただし、その仕組みや影響の大きさは種類によって異なり、まだ分かっていない点もあります。

なぜリップが下を向くのか?
胡蝶蘭のリップは、美しく見せるためだけにあるのではありません。
自然界では、花を訪れた昆虫を中心部へ導く役割があると考えられています。リップが下側にあることで、昆虫がとまりやすい足場になります。
さらに、昆虫が決まった向きで花の中へ入ると、花粉を受け渡す部分に触れやすくなります。昆虫に花粉を運んでもらう胡蝶蘭にとって、花の向きは子孫を残すためにも重要なのです。
多くのランで、リップを下側に移動させる花の回転は、昆虫による受粉を助ける仕組みだと考えられています。
また、贈答用の胡蝶蘭を見ると、複数の花がきれいに正面を向いて並んでいます。
これは、花が自然に行う半回転だけで作られた姿ではありません。
生産者は、花茎が伸びる方向や光の当たり方を確認しながら、支柱などを使って全体の姿を整えます。花が自然にリップを下へ向ける動きと、生産者が行う仕立てが組み合わさることで、美しく整った胡蝶蘭になります。
つまり、「リップが下を向くこと」と「花が正面にそろうこと」は、似ているようで別の仕組みなのです。

まとめ
胡蝶蘭の花は、つぼみの成長から開花までの間に向きを変えます。花の付け根がゆっくりとねじれ、中央のリップが下側へ移動するのです。
この動きは、昆虫が花にとまり、花粉を運びやすくするために役立つと考えられています。
静かに咲いているように見える胡蝶蘭ですが、開花するまでの間には、私たちが気づかないほどゆっくりとした動きがあります。
いかがでしたでしょうか。 つぼみの付いた胡蝶蘭を見かけたときは、花がどちらを向いているか観察してみてください。開花までの変化を知ることで、いつもの胡蝶蘭が少し違って見えるかもしれません。











