【メリクロン】同じ花を大量生産する方法
園芸店に並んでいる胡蝶蘭を見ると、同じ品種の花は色や形がよくそろっています。
これはメリクロンと呼ばれる方法で増やされた苗が多いためです。メリクロンとは、胡蝶蘭の一部を取り出し、同じ性質を持つ苗をたくさん作る技術です。
メリクロンで殖やした苗がどんな性質をもつのか、どのような方法で苗を増やしているのかなど簡単に紹介します。
メリクロンはクローンを作る
メリクロンでは、増やしたい親株から小さな組織を取り出して育てます。
種をまいて増やすのではなく、親株の細胞から新しい苗を作るため、できた苗は基本的に親株と同じ性質を持っています。このように、同じ遺伝情報を持つ個体を「クローン」と呼びます。
クローンと聞くと特別な技術のように感じますが、植物では挿し木や株分けもクローンを作る方法の一つです。メリクロンは、それを清潔な容器の中で行う技術と考えると分かりやすいでしょう。
また、胡蝶蘭は種から育てることもできますが、種から育った苗は、親株と同じ花を咲かせるとは限らないうえ、開花に至るまで何年もかかります。
人の兄弟姉妹に違いがあるのと同じように、同じ親からできた胡蝶蘭でも、花色や模様、大きさなどに個体差が現れます。
新しい品種を作るときには、この違いが重要ですが、気に入った花を同じ特徴のまま増やしたい場合は、種よりもメリクロンが適しています。
メリクロン苗の作り方

まずは殖やしたい胡蝶蘭から、花茎の芽などを小さく切り取ります。
このとき、切り取った芽の表面には目に見えないカビや細菌が付いているため、取り出した部分を丁寧に殺菌します。
殺菌した組織を栄養と植物ホルモンが加えられた寒天培地に置き、無菌の状態で培養します。
しばらく培養を続けると、植物の組織から緑色の小さなかたまりができます。
これはPLBと呼ばれる組織で、ここから葉や根を持つ苗が作られます。このPLBは数珠つなぎのようにたくさん形成されるため、小さく分けて培養すると、その数をさらに殖やせます。
このように一つの組織からたくさんのPLBを作れるため、一株の親株から多くの苗を殖やすせます。
殖やしたPLBを別の培地へ移すと少しずつ葉や根が伸び、小さな胡蝶蘭の姿になります。
苗が十分な大きさになったら取り出し、外の環境に順化させると苗として出荷できる状態になります。
イレギュラーもある
メリクロン苗は、基本的には親株と同じ花を咲かせます。しかし、すべてが完全に同じになるとは限りません。
培養している途中で細胞に変化が起こり、親株とは異なる花が咲くことがあります。これを「ソマクローナル変異」と呼びます。
例えば、次のような変化が現れる場合があります。
・花の色や模様が変わる
・花弁の形が変わる
・花の大きさが変わる
・花茎の伸び方が変わる
・左右の花弁がリップに似た形になる
生産者にとってソマクローナル変異は、花の品質がそろわなくなる原因です。その一方で、偶然生まれた珍しい花の中から、新しい品種が見つかることもあります。
まとめ

メリクロンは、優れた胡蝶蘭の一部を培養し、親株のクローンをたくさん作る技術です。
培養容器の中で小さな組織を増やし、そこから葉と根を育て、少しずつ外の環境に慣らしていきます。普段目にする華やかな胡蝶蘭も、最初は容器の中にある小さな組織から始まったのかもしれません。
一方、まれに親株とは違う花が現れることもあります。同じ花を増やす技術でありながら、思いがけない個性が生まれる可能性もあるところが、メリクロンの興味深い点ではないでしょうか。











