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【胡蝶蘭の花色はどう作られる?】3つの色素と代表的な遺伝子

胡蝶蘭には、白、ピンク、赤紫、黄色、緑色など、さまざまな花色があります。さらに、花びら全体が均一に色づく品種だけでなく、斑点などの模様が入る品種もあります。

こうした花色を生み出しているのが、花びらに含まれる「色素」です。胡蝶蘭では、主にアントシアニン、カロテノイド、クロロフィルという3種類の色素が関係しています。

そして、植物が色素を作るために必要なのが遺伝子です。遺伝子は色そのものではなく、色素を合成する酵素の設計図として働きます。

この記事ではそれぞれの色素3種とそれぞれの色素に対応する遺伝子を一つずつ紹介します。

赤や紫を作るアントシアニンとPhCHS5

アントシアニンは、赤、ピンク、赤紫、紫などの色を作る色素の総称です。ブルーベリーや紫キャベツに含まれる色素としても知られています。

一般的な赤紫色の胡蝶蘭では、花弁にシアニジン系のアントシアニンが蓄積します。同じ種類の色素でも、量が少なければ淡いピンク色に、多ければ濃い赤紫色になります。非常に多く蓄積すると、黒っぽく見えることもあります。

アントシアニンに関係する代表的な遺伝子として、胡蝶蘭では「PhCHS5」が挙げられます。

PhCHS5は、アントシアニン合成の最初に働く酵素の遺伝子です。色素作りを料理に例えると、食材を切って加工するための包丁の役割です。

2023年の研究では、PhCHS5を胡蝶蘭で強く働かせると、花色が濃くなることがわかっています。

黄色やオレンジ色を作るカロテノイドとPSY

カロテノイドは、黄色やオレンジ色を作る色素です。ニンジンの橙色や、トマトの赤を作る色素として知られています。

黄色系の胡蝶蘭では、花弁にカロテノイドが蓄積します。さらに、黄色いカロテノイドと赤紫色のアントシアニンが同じ花びらに存在すると、両者の色が重なり、オレンジ色や赤褐色、茶色などに見えることがあります。

カロテノイド合成を代表する遺伝子が「PSY」です。

PSYも、カロテノイド合成の最初に働く酵素の遺伝子です。PSYがフィトエンという物質を加工することで、カロテノイドになります。

2014年に白いペダルと赤いリップの遺伝子発現を比較した研究が行われました。この研究では、PSYを含むカロテノイド合成遺伝子が候補として見つかり、花弁とリップで発現量が異なることが示されました。

緑色を作るクロロフィルとCHLH

クロロフィルは、植物の葉を緑色に見せている色素です。光合成に必要な色素ですが、葉だけでなく、緑色系の胡蝶蘭の花びらにも含まれています。

花びらのクロロフィルが多ければ緑色が濃く見え、少なければ黄緑色や淡い緑色になります。また、花が成長する途中でクロロフィルが分解されると、緑色は薄くなります。

クロロフィル合成に関係する代表的な遺伝子として、「CHLH」があります。

白い胡蝶蘭には白色の色素がある?

CHLHは、色素のもとになる分子にマグネシウムを組み込む酵素です。この反応によって、クロロフィルが合成されます。

白い胡蝶蘭には、色素は含まれていません。 多くの場合、アントシアニンやカロテノイドなどが、花びらでほとんど作られず、色素の少ない細胞や細胞間の構造で光が反射・散乱するため、私たちの目には白く見えます。

模様はどうやって作られる?

色素を作る遺伝子が存在していても、花びら全体で同じように働くとは限りません。

胡蝶蘭では、色素合成酵素の遺伝子を働かせる「スイッチ役」の遺伝子も研究されています。このスイッチが花びら全体で入れば全体が色づき、一部の細胞だけで入れば斑点や縞模様になります。 つまり、模様を決めるうえでは「どんな色素を作るか」だけでなく、「花びらのどこで色素を作るか」も重要です。

遺伝子が同じなら花色も同じ?

花色は遺伝子だけで完全に決まるわけではありません。同じ品種でも、温度、光、花の成長段階などによって、色の濃さが変わります。環境によって色素関連の遺伝子の働き方や、色素の蓄積量が変化するためです。遺伝子は花色を作るための設計図ですが、最終的な色は、複数の遺伝子、細胞内の環境、栽培環境が組み合わさって生まれます。

まとめ

普段、私たちは胡蝶蘭を見て「きれいなピンク」「珍しい黄色」と、何気なく花色を楽しんでいます。しかし、その一枚の花びらの中では、複数の色素が作られ、遺伝子がその量や働く場所を細かく調節しています。

そう考えると、赤紫、黄、緑、白、そして模様も、少し違って見えてこないでしょうか。

同じような色に見える花でも、使われている色素や遺伝子の働き方は同じとは限りません。反対に、同じ色素を使っていても、その量や作られる場所が変わるだけで、まったく異なる印象の花が生まれます。胡蝶蘭の花色の奥には、私たちが目で見ている以上に複雑で精密な仕組みが隠されています。

皆さんの身近にある胡蝶蘭は、どのような色や模様をしているでしょうか。次に花を眺めるときは、その色を作る色素や遺伝子の働きにも、少し思いを巡らせてみてください。